化学メーカー資材のゆうです。
キシレンは、単体溶剤として見なされるのですが、異性体であるエチルベンゼンを含有しています。
では、どのくらいのエチルベンゼンが含有しているのかを解説していきます。
この記事でわかること
・キシレンのエチルベンゼン含有量
・キシレン主体のシンナーは2石なのか
・2石のシンナーにする方法
キシレン中のエチルベンゼンの含有率
結論から言います。
原料メーカーによって様々で、且つ同じ原料メーカーでも製造ロットによって変わってきますがだいたい50%前後になります。
以下、某原料メーカー数社の公開しているSDSのデータです。
項目 | メーカーA | メーカーB | メーカーC | メーカーD | メーカーE |
エチルベンゼン 含有率 | 50% | 59% | 43% | 60% | 64% |
ご覧の通り、メーカーによって様々です。
上記の中でも43%~64%まで幅広い数字が記載されています。
そして、ほとんどのメーカーでSDSに以下文言の記載があります。
※原料等により、濃度(含有率)は変化する。
ということで、同じ原料メーカーでさせもロット毎にバラツキがあるという事がわかると思います。
エチルベンゼンの含有率はおよそ半分程度

ざっくり言うとどのくらいなの?
「とりあえず、おおよその基準が欲しい」という場合は、半分ぐらい含まれているんだと思っておきましょう。
エチルベンゼンの含有率によって何が変わるかというと、代表的なのが引火点です。
エチルベンゼンの含有率で引火点は変わる
エチルベンゼンの含有率によって、キシレンとしての引火点が変わってきます。
項目 | サンプル キシレン① | サンプル キシレン② | サンプル キシレン③ | サンプル キシレン④ | サンプル キシレン⑤ |
引火点 測定結果 | 25.3℃ | 23.4℃ | 25.7℃ | 22.7℃ | 24.1℃ |
平均値は24.2℃となりますが、ご覧の通り 同じメーカーでも製造ロットによって、キシレン自体の引火点がかなり変わってきます。

キシレンってそういうもんなんだね
この変化に大きく影響を及ぼしているのが、キシレン中のエチルベンゼンの含有量です。
そして、引火点の変化によって何が変わるかというと、危険物 第1石油類か第2石石油類かという点です!
引火点次第で 第1石か第2石かが決まる
危険物の第1石油類か第2石油類かで、消防法上での管理方法が変わってきます。
1石の方が危険という扱いであるため、保管方法なども厳しくなります。
よって、できれば2石になるような製品を取り扱いたいところです。
代表的なシンナーを例に、キシレン含有シンナーを見ていきましょう。
キシレン9割のシンナーは2石なのか
代表的なシンナーの1つに、Tシンナーという トルエン9割・キシレン1割の物があり、建築業界で良く使用されます。
メーカーによって配合は様々ですが、トルエン:95〜99%・キシレン1〜5%などが市場にあります。
なぜこのような配合率なのかという点は、劇物に該当するのを避けるためで、詳しくは別の記事に記載します。
一方、Xシンナーなど言われ、Tシンナーより乾燥速度を遅めに調節してキシレン9割のシンナーがあります。
これはTシンナーとは逆の配合で、キシレン:95〜99%・トルエン1〜5%という配合です。
ここで疑問が発生するわけです。
キシレンシンナーの引火点が何℃なのか、1石なのか2石なのか

扱っているシンナーは? 本当は1石?
トルエン自体は引火点が4〜5℃なので、単体であれば間違いなく1石になります。
例えばキシレン95%・トルエン5%とした場合、単純にキシレンの平均値℃に95%をかけて、トルエンの4.5℃にも5%をかけて、二つを足せば答えは出るかと思いきや、答えは出ません。
引火点の計算方法はもっともっと複雑です。
しかも、計算でそれなりの答えが出ても、実際に計測すると計算値とは異なる場合がほとんどです。
結論:実際に測ってみないとわからない

いや、、なかなか測れないよー。外注するとお金かかるよー
測定できれば確実にわかるのですが、キシレン原料のロットが変われば、僅かに引火点が変わる可能があります。

確実に「2石」である必要があるんだよ! SDSも2石になってるよ!
危険物 第2石油類のシンナーにする方法
消防法の絡みで2石にしないといけない場合は、2石の原料でシンナーを作ってしまえば、100%2石のシンナーができます。
キシレン単体での引火点はブレがあると言っても、1石になる21℃を切ることはありません。
つまりキシレンに混ぜる相手の原料を2石の原料にしてしまえば、確実に2石のシンナーになります。
キシレンに混ぜる原料を以下の中から選べは、100% 第2石油類のシンナーになります。
第2石油類の原料(抜粋)
【炭化水素】
ミネラルスピリット(ターペン)、高沸点sv-100、高沸点sv-150
【エステル】
酢酸ブチル、酢酸イソアミル
【アルコール】
Nブタノール、イソブタノール
【グリコールエーテル】
PGM、PGM-AC、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ
上記の内容を見て、わかる方もおられると思いますが、、
2石のシンナーを作ろうと思うと、少々価格上がります。。。
危険な溶剤は安い、、危険度が低く環境に良い溶剤は高い、、と言う傾向にあります。(←あくまで感覚的。そうで無いものもあります。)
お値段のバランスを見ながら、シンナーの組成を考える必要がありますね。
因みに上記の表だと、炭化水素→アルコール→エステル→グリコールエーテルの順で高くなっていきます。
以上
参考になれば幸いです。
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